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勝手に予習その2 - 『きょうのできごと』

きょうのできごと スペシャル・エディション

きょうのできごと スペシャル・エディション

監督: 行定勲
原作: 柴崎友香
出演: 田中麗奈, 妻夫木聡, 伊藤 歩, 柏原収史, 池脇千鶴, 他
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 行定勲監督の『きょうのできごと』っていう映画を観ました。この映画、事件とかなんも起こりません。フツーの若者達のフツーの1日のできごと。
 そのフツーさが、なんでか知らんけどめちゃくちゃオモロいです。よその人の日常会話っていうのは、こんなにもオモロいんやなぁ、と感動しました。しかも、京都が舞台なんですけど、まぁどーでもいいんですけど僕は一時期京都に住んでたことがありまして、まさにその界隈のシーンも出てきて、なお感動しました。

 いろんな登場人物が出てくるのですが、そのうちの一人に「かわちくん」っていう男の子がおりまして、僕は、「あっ、かわちくん、俺と似とる」って思いました。かわちくんは、まわりの人にすごく気を遣う人で、どうでもいいことにもすごく気を遣ってしまって、彼女になんかムカつかれたりしています。
 僕も実は、密かに色々気を遣ってます。かなり的外れなことに気を遣います。例えば、車を運転しているとき、後ろの車が僕のどんくさい運転にイライラしていないか、めちゃくちゃ気になります。どきどきします。バックミラーばかり見てしまいます。ほとんど前見て運転してないです。
 そんな感じなもんで、かわちくん俺もそうやで、と思った次第であります。全然ちがうやろ、ってツッコまれるかもしれませんが。でも、かわちくんが美少年なところなんかも僕と共通しています。・・・・・スイマセン調子にのりすぎました。

 作品の中で、女の子二人がかわちくんについて、陰でこんな感じの会話してました。「かわちくんって禿げそうやで」「ええねん、禿げたって。禿げの男前と髪の毛ふさふさの不細工やったら、禿げの男前のほうがええもん」
 ありがとう、かわちくん。生きる勇気をありがとう。僕は明日からとりあえずダイエットに励むよ。とりあえず、禿げのデブはまずいよね。でもやせたら俺は男前になるんか?っていう一抹の不安をおぼえなくもないけど、そんな現実からは目をそむけて、がむしゃらにやってみるよ。

 いろんな意味で映画に感動した僕は、レンタル屋さんにDVDを返したその足で、原作の小説を買いに本屋さんに行きました。暇なもんで。前に原作者の柴崎友香さんがテレビ出てるの見たことあるんですけど、えらい感じのいいお嬢さんで、小説読んでみたいなって思ってたもんで。
 この文庫本がまた、めちゃくちゃ面白くて、そしてなにより、原作にも「禿げの男前」の会話がありました。僕はそのページの角を折りました。
 ありがとう、柴崎友香さん。生きる勇気をありがとう。僕は明日からこそ、ダイエットします。へこたれそうになったら、折り目をつけたページを読み返します。

世界の中心で、愛を叫ぶDVD発売記念プレミアムツアー

防波堤  東宝 世界の中心で、愛を叫ぶ DVDオフィシャルサイトというところのINFORMATIONコーナーを見ていたら、「DVD発売記念プレミアムツアー」というのがありました。ロケ地をめぐる2日間の旅ということです。12月18、19日。最小催行人数80名ということで、東京、大阪から大勢の観光客さんたちが我が町、香川県・庵治町を訪れてくださるみたいです。この日は庵治町の人口密度がぐっと上がりそう。

 映画の公開以来、ロケ地となった我が町、庵治町はすっかり観光地およびデートスポットと化したわけでありまして、だもんでこれまでにもめちゃくちゃ多くの方が、僕の住んでる庵治町に遊びに来てくださったことと思います。
 思うんですけど、庵治町を訪れた方々は、庵治町のことをどうお感じになるんでしょうか?あんだよ、きたねぇーとこだなぁ、おい、って思われてないか心配です。きれいな景色だよぅ、あるいは、シブい町並みだよぅ、と思ってくださっていることを信じたいです。願いたいです。

 僕は特に中学卒業までの15年間、ほとんど庵治町から外に出ることなく生活していました。それこそ「世界の中心で、愛を叫ぶ」のロケにつかわれたブランコのあたりで鬼ごっこしたり野球したり、防波堤のあたりで、毎週のように釣りしたりして遊んでた。
 ごくごくたまに「のー、今度の日曜、まち行かん?」ってなった日にゃあ、もうちょっとした一大イベントで、ってあっ、スイマセン、「まち」っていうのは僕らの中で、っていうか方言なんかな?「まち」っていうのは高松市のアーケード商店街を指します。でその日曜日、挙動不審の丸坊主くんたちが「まち」を練り歩くわけです。ってあっ、スイマセン、「丸坊主」っていうのは、僕が通ってた当時、庵治町立庵治中学校は「男子は丸坊主、女子はおかっぱ」ってのが校則でした。もうそんな校則ないけど。十数年前の昔話。

 そんな庵治中学生にとって、町外の高校に進学するってのは、なんつーかちょっと特別な意味が出てくるわけで、受験を控えた中3のとき、国語の先生が授業中に言ってました。職員室に遊びにきた卒業生が、「高校で、俺らの使う言葉が、他の人が使う言葉と違う、ってバカにされる。なんでセンセ、ちゃんとした言葉教えてくれんかったん?」みたいなグチを言ってたと。
 まぁ先生に文句言ってもしゃあないです。庵治町は香川県の中でも方言がダントツできついんだと思われます。はっきりいって言葉汚い。そんな感じで、高校入って友達とおしゃべりできなくなる卒業生がいたらしいです。まわりの友達にからかわれるのが怖くて。

 で、僕、実際高松市内の高校に通ってみたら、先入観がはたらいたのかもしれませんが、やっぱ高松市内の友達の言葉はきれいだなーって思いましたです。高松市民は輝いてたよ。まぶしかったよ。「での、メバルのの、口からの、針はずそうとしたらの、背びれビーン!なっての、がいに怒っじょんじゃ」って感じの僕の言葉に対し、高松市民は「昨日ね、すごくお腹すいたからね、コンビニでポッキー買っちゃったよ」みたいな言葉でした。・・・・・ちょっと大げさか。
 「昨日ね」とかって、なにねーねー言うとんじゃ。男やったら「の」やろ「の」。のーのー言わないかんやろ。僕は、負けたらいかん、思いました。僕はことあるごとに、「自宅から最寄の駅(隣町の牟礼町にあり)まで自転車で30分」等、庵治町の田舎ぶりをアピール、クラスの人気者の座を狙いました。駄目でした。
 また、クラスで庵治町ばりの片田舎出身者を募り、「郡民クラブ」(計2名)を結成、日々方言を研究していました。そして高松市民には通じない方言を選りすぐり、会話の中でそれらの方言を無駄に多用、クラスの流行語の独占を目論見ました。駄目でした。

 とかってまぁそんな感じで、その後関東の大学に進学しても、ことあるごとに僕は田舎者であることをアピールし、ある種、田舎出身であることを自慢し、いなかっぺ大将的なキャラクターを自作自演しようとしました。嬉しげな言い方をすると、庵治町が僕のアイデンティティでした。そういいながら、あんまり庵治町のこと、地元住民のくせに知りませんけど。ま、それはさておき。
 以前、僕の庵治町の実家に遊びに来た東京の友達が、こんなこと言いやがりました。

 「そんな言うほど、田舎じゃないじゃん」

 ショックでした。おい、俺を全否定してくれるな。
 それ以前にも、何人か大学の友人が我が家に遊びにきたことがありましたが、皆そこそこ庵治町の田舎ぶりに驚いてくれました。でも、その「田舎じゃないじゃん」って言った東京っ子は、旅行が大好きで、石垣島からタイの山奥まで、いろんなステキ田舎を見てきた人でして、そんなステキ田舎にくらべると、庵治町は家もそこそこあるし、信号も一応あるし、ってことなんでしょう。

 そうなんです。庵治町の田舎ぶりは正直、中途半端。僕はそう思います。微妙に近代的な建物があったりして。海の水も沖縄とかに比べたら、そらぁ全然キレイじゃないです。ほな庵治町、駄目やん、ってなるかっていうと、でもそうはならないんです。
 なんかいいんです、海とか山とか町並みとか。なんかいい。特に漁師さんとか石屋さん(庵治石っていうのはすごく有名、イサム・ノグチもお気に入り)たちが培ってきた独特の雰囲気っつーか、なんかいい感じの他にはない田舎さを、僕は庵治町に感じますです。うまくは言えんけど。

 僕が稚拙なゆえ上手く伝えられない、この「なんかええ感じ」を、庵治町外の人、香川県外の人、海外の人たちに、実際に目で見て、少しでも共感してもらえたなら、そんな喜ばしいことはありません。

勝手に予習その1 - 『ひまわり』

ひまわり

ひまわり

監督: 行定勲
出演: 麻生久美子, 袴田吉彦, 他
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 映画「世界の中心で、愛を叫ぶ」のDVDを予約しましたので、きたる12月23日の発売日に向けて気分を高めておかなければと、僕の映画オタク魂に火がつきました。
 そして家にひきこもり、行定勲監督『ひまわり』を観ました。行定勲監督作品の中で、僕は1番これが好きです。きれいな映画です。

 主人公(袴田くん)が小学校の同級生、真鍋朋美(麻生さん)のお葬式で故郷に帰って、お葬式には小学校の同級生たちや真鍋朋美の元恋人とかが集まってて、あれやこれやするうちに真鍋朋美はこんなこと考えとったんちゃうんかなぁっていうのが解ってくると同時に、主人公は朋美に恋してたことを徐々に思い出し、やがて現実と記憶が交差していって・・・・・
 って僕があらすじを説明すると、なんかつまんなそうだ。そういえば小学生のときから僕は読書感想文を書くのが苦手で大嫌いで、小学校から高校まで読書感想文ストライキを一人で実行し続けました。そんな小憎らしい小学生だった僕も、密かに恋をしていました。そんな小学生時代の恋心を呼び起こし、ぎゅんぎゅん刺激してくれるのがこの『ひまわり』です。
 あと若手の役者さんがいっぱい出てて、さわやか。
 そして主人公たちの生まれ故郷の景色や町並みが素敵。この映画を観終わると、あぁ、僕も田舎に生まれて誠に幸運なことだよぅ、と思います。

 そんな大好きな映画『ひまわり』を撮った行定監督が「世界の中心で、愛を叫ぶ」を、今度は僕の生まれ故郷、庵治町で撮るっていうのは、それはもう僕にとってはどえらい事件でした。ロケ現場まで走って行って野次馬しました。森山未來くんに周りのおばちゃん達がきゃーきゃー言ってる中、僕は一人密かにナマ行定に感激していました。ぱっと見、映画監督には見えない若さとオシャレぶりでした。
 とかって監督の顔知ってるっていうのは、やっぱマニアックなんでしょうか?でも行定監督、いっぱいテレビとか出てるし。

 でも僕の友人「だんじりファイター君」は監督の顔知らなかったようです。映画「世界の中心で、愛を叫ぶ」のシーンで、ちょこっとだんじりが出てくるところがあるんですが、そのだんじり担いでるのは庵治町・王の下の方々で実際夏とか秋のお祭りのときなんかはだんじり担いでらっしゃるわけですが、そのうちの一人、友人だんじりファイター君はそのだんじりシーンの撮影後、僕にこんなことを言っていました。

「で、どの人がギョーサダ監督やったん?たぶん来てなかったわ」

ユキサダだっつーの。しかも監督が来てないのに撮影するなんてあり得んだろ、たぶん。

 ついに俺も銀幕デビューかぁぁ、と得意気なだんじりファイター君は、こんなことも言っていました。

「なんか本番中やのにだんじり担いどる俺の横でこの辺では見かけん高校生が号泣しよってのー、ボクどうしたん?って俺声かけそうになったけど、あえて声かけんと自分の演技に集中したわ」

っておいっ。あんたそりゃ森山未來くんだよ。サクだよサク。サクが悲しみに打ちひしがれてるんだよ。ほんとにボクどうしたん?って声かけてたら、えらいことになってたよ。まぁある種、君の集中力ある演技は、正解だった。

 僕はそのあと、だんじりファイター君に説教がてら、僕の行定監督に対する熱い思いを語りました。「そんなに好きなら、ゆーてくれたらよかったのに。だんじり担がせてあげたのに。そしたら映画に出られたのに」と言う彼に、僕は言ってやりました。
「いや、いま俺太っとるし、それはええわ」
どないやねん。複雑なファン心理。

ともだち多い男


 最近僕がくだらんホームページを作り始めたことを知っている、数少ない知人の間で、「あの子の日記ってお母さんしか出てこん」「友達おらんのやなぁー」「かわいそー」という評判がうなぎのぼりだそうで、これはいかんです。
 今日はともだちをイニシャルでいっぱい登場させてやりますです。

 昨日の昼頃、電話がありました。庵治小学校、庵治中学校の同級生、K君(まずはともだち1人目)からです。なんでも「会社の同僚のM子ちゃん(2人目)とT子ちゃん(3人目)とで、今夜ごはんでもどうですか?」ということでした。って、へへ。どうっスか?もう3人も登場しました。自分、ともだち多い男ですから。
 もともとM子ちゃんともT子ちゃんとも面識はありましたが、今夜は一つ、アダルトな俺をアピールしよう、とジャケットを着ていくことにしました。なので、肥えた体つきになって以来、封印していたジャケットを押入れの奥から引っ張り出し、お母さん(4人目)にアイロンをかけてもらいました。ジャケット姿で気合いを入れたわけです。「もしも堀江社長が貧乏だったら」的なルックスに仕上がりました。

 なぜそこまで気合いが入っていたかというと、今日は二次会でカラオケに行くに違いない、と踏んでいたからであり、なぜカラオケにそこまで気合いが入っていたかというと、以前M子ちゃんやT子ちゃんに「俺は歌上手いぜ、俺の平井堅を聞いたら惚れちゃうぜ、俺とカラオケ行くときは勝負パンツはいて来たほうがいいぜ」と豪語していたからであり、僕はもう豪語したその日のうちに後悔していました。でもそんな自分で自分にかけたプレッシャーに負けるな俺、と僕は気合いを入れたのであります。

 待ち合わせまで時間があったので、僕はK君と二人で、レンタルビデオ屋さんのTタヤ(5人目)でぶらぶらしました。僕は歌のレパートリーを増やしておこうと思い、試聴コーナーで氷川K君(6人目)の「きよしのズンドコ節」を1番だけ5回繰り返して聞きました。マスターしました。
 心の中で、ズンズンズンドコ熱唱している間に、僕はなんだか熱っぽくなって咳がゲホゲホでて吐き気がしてきました。極度のプレッシャーが原因でしょうか。

 僕は途中薬局で買ったキティちゃんがプリントされているマスクをつけて待ち合わせ場所に行きました。僕のキティちゃんを見て女子は失笑。ウケ狙いで姑息なことをしてはいけません。
 宇多津という所にある、ゴールドタワーという名の黄緑色のネオンがきれいなビルの隣の、魚釣りができる飲食店で、タイを釣ってそれを刺身にしてもらって食べました。

 そしてやはりカラオケへ。僕はとにかく主導権を握ろうと、トップバッターを買って出ました。ヤッターマンのテーマで。「エンジンぶるぶる絶好調ー!足をあげてチーンチン!」などと絶叫していると無性に恥ずかしくなり、歌の途中で、演奏停止ボタンを押しました。
 その直後僕はビビりました。M子ちゃんとT子ちゃんはかわいい歌をとても上手に歌いこなし、僕はこんな人たちに豪語してしまったのかと気分が悪くなりました。そしてK君は予想通りお笑い担当でした。ほな俺の役割ってなんなん?ここはもう起死回生の平井堅を繰り出すしかない、と思いました。映画「世界の中心で、愛を叫ぶ」のロケ地、香川県は庵治町に生まれ育った男が、「瞳をとじて」を甘く切なく歌い上げるしかない!と。
 歌い出した途端、僕は感じました。女子たちがうっとりしているのを、かつキャーキャー言っているのを。あのときの女子たちを、漫画で描けって言われたら、僕は目をハート型に描きますね。そして歌が「ひ~とみ~をと~じて~」の部分に差し掛かると、黄色い声は最高潮、「はぃ、やめ、やめ~、終了~」コールの嵐。僕はたまらず演奏停止ボタンを押しました。俺に惚れちゃぁいけないぜ。

 それ以降も、僕は自分が歌うたびに、自分で演奏停止ボタンを押し続けました。一人でなんかようわからんプレッシャーに負け続けました。ズン、ズンズン、ズンドコと歌って、「き・よ・しぃ~!」と合の手を入れているのが僕自身のみなのに気づき演奏停止ボタンを押しました。

 もう僕はキレた。怒った。怒ったらパンク。パンクロック。誰も知らない歌でも構やしねぇ。怒りのパンクをお見舞いするぜOiOiOi。ところでパンクって何?などとぶちキレた僕は、グループ魂の「Run魂Run」「就職しやがれ!」「竹内力」を立て続けに熱唱しました。

 こんなんやから僕はともだちが多いんや。

納豆が洪水

冷蔵庫  なんか今日は眠いから早く寝ようってんで、21時に床につきました。2時間で目が覚めました。怖い夢を見て、はっ、夢か・・・・・って目が覚めました。
 えらい怖い夢でした。家の冷蔵庫を開けると、包装されていない、ありのままの姿の納豆があふれていたんです。まるで得たいの知れない生き物のように、うねうね動いていました。なぜか納豆以外は何も入っていない。ただただ納豆が、どろどろねばねば糸を引いて、冷蔵庫からこぼれ落ちそうなほどいっぱいになっていました。
 僕はその納豆を、何回も何回も両手ですくって冷蔵庫から取り出そうとしたのですが、納豆は冷蔵庫の奥からどんどんあふれ出て、収拾がつかない状態でした。僕は絶望感にさいなまれ発狂しそうになり、「ひょわーーーうっ!!」と意味不明の叫び声を上げました。その瞬間、その自分の叫び声で目が覚めました。はっ、夢か・・・・・。夢でよかった、と心底安堵しました。

 おとといからダイエットのためジョギングを開始しました。早くもヘコタレそうになっています。でジョギングしてる期間は意識して納豆を食べるようにしているんです、脂肪の燃焼促進のために。
 でも僕は最近までずっと納豆が食べられませんでした。あんな臭い食べ物を、美味い美味い言って食ってるヤツはみんな鼻がつまってるんだと思っていました。
 しかし今年の夏、僕は納豆を克服しました。今年の夏、草野球での自分のあまりの不甲斐なさに一念発起、「健康のためなら死ねる」を合言葉に、来る日も来る日も納豆を無理矢理口に流し込みました。そして僕はやったよ、中山きんに君。納豆が普通に食べられるようになったんだ。
 納豆に慣れてからはむしろ、納豆意外とおかずになるな、とごはんをガツガツ食べました。納豆ってけっこー美味いやん、と思い始め…ってノーノー。「美味い」とは認めたくない、意地で。あんな腐った豆を好き好んで食ってる人間は舌のセンスがないんだ、とさんざんこれまで納豆好きの人を否定してきたんで。

 思えば、納豆なんて今後何があっても絶対食わん、と僕が断固決意したのは、中3の冬でした。
 それまでの義務教育課程において、「給食を残したことがない」ということが僕の密かな自慢でした。プライドでした。しかし、義務教育課程をもうすぐ修了って段になったある日の給食に、紙パックに入ったちっちゃな納豆が付いていました。なぜに突然納豆?ホワイ?不思議でした。僕の通った庵治町立庵治幼稚園、庵治町立庵治小学校、庵治町立庵治中学校の3つの校舎は、道を挟んで並列していて、小学校敷地内にある給食センター1ヶ所からそれぞれに給食が配られていました。同じ給食センターの給食を10年以上食べ続けたわけですが、納豆が出たのはそのときが初めてでした。
 っていうか我が家では納豆が食卓にならぶ習慣が皆無だったので、納豆なんて食べたことがなかった。

 生徒の誰かが納豆のパックを開けた瞬間、「臭っ!!」って思いました。何が起こっているのかわかりませんでした。その悪臭の中、みんな平気な顔してなんか箸で納豆をにちゃにちゃこねくり回したり、口元とパックの間に伸びる謎の糸に対して箸をクルクルクルッとさせていました。
 僕も見よう見まねで、まず一口食べてみました。「おえぇっ」って吐きそうになりました。唇とかあごが糸でべとべとになるし、臭いし、べとべとを手でぬぐったら今度は手が臭いしで、もう僕はパニック状態になりました。
 当時僕は、大人のシブい男を目指していたので、とにかくまず自分を落ち着かせました。そして分析しました。このマズさ、到底全部食えたもんやない。誰かにあげよう、或いは捨てよう。しかし僕の自尊心ちゃんが僕にささやくのです。でもそれじゃあ給食一回も残したことがないっていう伝説が水の泡になっちゃうよ?

 やるしかない。僕は意を決しました。全部食ってやろうと。口の中も外もねばねばするまま、僕は二口目、三口目…とがんがん攻めました。攻めつつも、「おえぇっ!おえぇっ!」と声のような音のようなものが止まりませんでした。
 さすがに隣の席の友達が、僕の尋常でない様子に気づき、「え?食べれんのやったら無理せんほうが・・・・・」と声をかけてきました。僕は涙目で答えました。「いや、大丈夫。これは俺のプライドの問題やから。・・・・・おえぇっ」

 納豆を半分くらいおえおえ言いながら食べたころだったでしょうか。僕の胃が「ぐふぅ!」とうなり声を上げました。すっかり成長したのどぼとけの下のあたりまで、胃の中のものが突き上げられたのがわかりました。それでも負けるものかと僕は思いましたが、どうしても次の一口に取り掛かることができませんでした。箸を動かすことができませんでした。僕の右手はぷるぷるしていました。
 見るに見かねた隣の友達が、僕に言ってくれました。「もうわかった。もうわかったけん、それ残そ?」
 あぁ、たとえ一人でも僕をわかってくれた人がいる。僕は鼻水を一度ぐすんといわせ、「うん・・・・・もうこれ残す・・・・・」と言いました。自分をわかってくれた人がいる、という安心感と、納豆に負けた、という敗北感を感じながら、しばし放心状態。

 っていう思い出があるからでしょうか、納豆を克服したはずなのに悪夢を見てしまうのは。自分の気づかないところでストレスを感じているのでしょうか。あ、そっかそっか、きっとストレス感じとんスよ。そうに違いない。だけん、僕ヤセんのですよ。ダイエットのつもりで納豆食べてたら、実はストレス溜めとって、そんでストレス太リしとったんスよ。そっかー、そういうことやったんかー。やけん、いつまでたってもヤセれんのかー。盲点盲点。